三重県伊賀市 本尊五大明王の祈願寺
伊賀では、正月の風物詩といえるこの行事。私は、組寺併せて7地区の法要に出仕しています。
空気が乾燥し、風邪やインフルエンザが流行るこの季節。例年 喉を痛めてしまいがちですが、今年は順調にお勤めできました。
さて今回は、経典のお話。
当寺の大般若経600巻は、50巻ずつ、合計12箱に納められています。一箱の重さは、約18kgと なかなかの重さです。
箱の裏書きを読むと、この一代前の箱が、寛政元年(1789) 慶應法印の代に作られています。
天正伊賀の乱によって、本尊のみを残し悉く灰燼と化した常福寺。「新調」とありますが、いまの経典が製本されたのは、225年よりもう少し昔ではないかと推測されます。
続けて裏書きには、再調に当りご寄附いただいた5つの邑の名前が。
説明しますと、この大般若経典は、お勤めに当って 5つの邑に毎回持ち運ばれ、それぞれの場所でお勤めされています。
200年以上昔とあっては、主な運搬手段は、荷車やリアカー、主に人力で運んだのでしょう。内箱には、縄で強く結んだような跡が残っています。
(本堂より運び出される、大般若経典)
当番や厄年の方々がお寺まで経典をいただきに来て、各地区(邑)まで運び、お勤めが終わると、また次の地区にお届けする。
今日でこそ、自動車があり運搬も楽になりましたが、そんなバトンリレーのような作業が、世代を超え 今日まで200年以上ずっと続いているのです。
当番や厄年の方々がお寺まで経典をいただきに来て、各地区(邑)まで運び、お勤めが終わると、また次の地区にお届けする。
今日でこそ、自動車があり運搬も楽になりましたが、そんなバトンリレーのような作業が、世代を超え 今日まで200年以上ずっと続いているのです。
ただでさえ有り難い大般若のお勤めが、もっと有り難くなるようなお話。
ただ、私の筆力不足で少し解りにくい文章になってしまいました。
もう少し内容を整理して、来年のお勤めの際に、参列された皆さまにも聞いて頂こうと思います。
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今年の干支は、甲午(きのえうま)
「午」とは、皆さまよくご存じ馬のことです。
先史時代の倭国に馬はおらず、大陸から伝来した文化と聞きます。
食用・毛皮といった単なる家畜の用途に留まらず、乗馬・運搬・農耕・軍用などさまざまに活用され、紀元前より人類の歴史は、まさに馬と共に歩んできました。
現在では、牧場や競馬、特別な神事などでお目に掛る程度ですが、今なお多くの人々に愛し親しまれる特別な動物であります。
仏教においても馬は、瘤(こぶ)牛・象・獅子といったインドの四聖獣として取り入れられています。
最たるものは、馬の頭を頂く馬頭観音(ばとうかんのん)でしょう。ちょうど、私が住職を勤める上郡の蓮勝寺が、この仏を本尊に仰いでいます。
馬頭観音(hayagriva)は、観世音菩薩の変化仏の一つ。ヒンドゥー教の最高神ヴィシュヌの異名でもあります。
女性的で穏やかな表情をされている観世音菩薩の変化仏において、例外的に、目尻を吊り上げ、怒髪天を衝き牙を剥く忿怒(ふんぬ)相であることから「馬頭明王」と、明王部の一尊として数えられる場合もあります。
宝馬が力強く野を駆ける、その威勢が諸悪を打ち祓う。大食の馬が草を食むように、衆生の無明悪障を全て食らい尽くす馬頭観音。
その姿形から、馬の守護仏。さらには、あらゆる畜生道を化益する仏として民間に信仰されています。
蓮勝寺の馬頭観音像は、不幸にも昭和五十九年の火災により堂宇と共に消失。今の本尊は、新たに造り直されたものです。
この馬頭像の造立には、不思議な逸話が伝わっています。
蓮勝寺の火難から、少し後、名張市薦生(こも) 明王院のご老僧 岡田快浄(かいじょう)師の夢枕に馬頭観音さまが現れ、新しい馬頭尊像を彫って欲しいと告げられたそうです。
快浄師はこの天啓を受け、楠の霊木から愛らしい童子の姿の馬頭観音像を一体彫刻。本堂再建に併せて、その像をご寄進くださいました。
本堂再建より、間もなく30年。今日も、愛らしい童子姿の馬頭観音が、皆さまの暮らしを見守っておられます。干支に因んだ、馬頭の仏さま。ぜひ一度お参りになられてください。
暁の 夢路に告げし 馬頭尊
衆生の厄を 食みて護らん
※ 依那古仏教団の教化誌 『法縁』 第89号に寄稿したものを加筆修正しました。
新年明けましてお目出とうございます。
除夜の鐘を打ちながら去りゆく一年を思い、初日の出に新たな願いを託し、新しい年、新しい今日を迎えることが出来ましたこと、皆さまと共にうれしく存じます。
中国に『日に新たに、日々に新たに、又日に新たなり』という言葉があります。
これは、中国の聖人と言われる、殷(いん)王朝の創始者「湯王(とうおう)」が戒めの辞として洗面器に刻み、毎日洗顔の度に繰り返し読み、自身の体の垢をこすって落とすように、心も洗い清めて、新しい自分を磨かんと、自身に言い聞かせ心の糧として修養したといわれております。
それによって大成し、民衆より信望される明君になったと有ります。
皆さまも、心の支えとなっている言葉や教えを改めて思い、一年の計と共に再考されてはいかがでしょうか。
ところで、文化は急速に進んでおりますが、公害や異常気象に起因すると思われる台風や、今まで経験のない豪雨災害に、又知らぬ間に進んでいる自然破壊や、逃れられない天変地異等による苦しみが次々現れています。どうすれば良いのでしょうか。
こんな時機こそ私たちは、人が本来備えている「ほとけの心」を見い出し、心穏やかに過ごすための大切な智恵が必要と思われます。
「ほとけの心」とは慈悲、即ち慈しみを持つ心・哀れみを持つ心であり、それに気付き得ん為に、思慮深く実践行に勤めたとき、苦しみ・悩みを解決する糸口をきっと見つけることが出来、迷いは晴れると確信します。
この智恵を頂いて、先徳の御諭しを教訓に精進し、み仏のご加護を頂き、与えられたこの命を悔いなく全うして頂きたいと思います。
今年こそ、平穏な一年でありますよう祈念致します。
常福寺住職 織田杲深 執筆
※ 常福寺 正月寺報より転載
新年、明けましておめでとうございます。
2014年の正月は、雪も風もなく穏やかに迎えられました。
除夜の鐘を撞きに参られた方々に、笹酒や湯茶のご接待。パチパチと火の子を上げる篝火の傍で、檀信徒の皆さまと談笑する。
穏やかな時間が、ゆっくりと流れていきました。
さて常福寺では、今年も元旦から多くの皆さまにご参拝いただきました。
寺総代や地区の役員さま方を始め、毎年お参りくださるお檀家さま、篤信のご家族、近郊にお住まいの皆さま。また遠路、本尊五大明王のご開帳に合わせてお参りくださった方々など、大勢の方と新年のご挨拶をいたしました。
3日の初祈祷には、若い5名のお坊さんにご助法いただきました。
総本山長谷寺で厳しい修行を積んだ面々を中心に、新年らしく華があり、皆さまに元気と活力をお分けするような法要を修めることができました。
当日は、ありがたいことに暖かな小春日和。
法要後は、地元業者 株式会社キタモリさま、メモリアルホール紫蘭(しらん)さま、伊賀上野で人気のパン屋 liaison(リエゾン)さまのご協力により、うどん・けんちん汁の振る舞い、笹酒や甘酒の振る舞い、子供さん用にわた菓子やパンダの着ぐるみ、パンやラスク(お土産)の販売などなど、ご接待いただきました。
さらに今年は新しい試み、近在の獅子舞講である「里(さと)獅子神楽保存会」の皆さまにお願いして、境内で獅子舞いの奉納をして頂きました。
法要後、皆さまが穏やかに談笑される傍ら、獅子や天狗が舞い、軽妙なお囃子が聞こえてくる。そこには、誠に正月らしい縁起のよい空間が広がっていました。
さて ありがたいことに、例年お申込みや参詣者の数が微増しており、そろそろ護摩の座を増やすか、それとも常時焚き続けるかと、今後の形を思案せねばなりません。
愛知・岐阜・三重の三県に拡がる東海三十六不動尊霊場を、檀信徒の皆さまとお参りしている常福寺巡拝団。結願を迎える第6回は、豊川から知多まで、一泊して9ヶ寺を巡拝しました。
最初にお参りしたのは、第28番 新大仏寺。
東大寺復興を果たした高僧 重源上人が開創された伊賀別所は、広大な寺域に立派な伽藍が配されています。彩に色付いた紅葉が、差し昇る朝日に美しく照らされていました。
伊賀で、東海三十六不動尊霊場に属している寺院は、常福寺とこの新大仏寺さまの2ヶ寺のみ。
こちらの副住職 松本昇正さんは、伊賀四国霊場の実行委員として歩き遍路や『伊風道々』など、さまざまな事業で一緒に活動しています。当然、参詣者の中に顔見知りも多く、私たち一行を親しく迎えてくださいました。
第18番 遍照院は、真言宗豊山派の寺院。
三河三弘法の第一として、毎月弘法大師のご命日には、数万人の参詣者が列を為してお参りされる大寺院です。
個人的に、かねてお参りしたかった名刹では、こちらに勤務する同門の後輩 杉原杲龍くん、外山杲吽くん の二人が、広い境内を案内してくれました。
両名はちょうど、11月9日の『伊風道々』にも駆け付け、それぞれ和太鼓と声明のコンサートに出演してくれました。その節は、ご協力ありがとうございます。
お抹茶の接待を受け、二人に諸堂を案内して頂く。
本堂をお参りした際には、私の両脇に座って一緒にお勤めをしてくれました。
修練を重ねた読経に合わさる、力強く正確な太鼓。巡拝団一同 お二人の対応に大層感激して、まさに法悦の参拝となりました。
2日目は、お参りを重ねながら知多半島へ移動。
午後には、第21番 大御堂寺(通称 野間大坊)をお参りしました。
源義朝公ゆかりの古刹は、こちらも真言宗豊山派の寺院。
私が駆け出しの若僧だった頃、ご指導いただいた水野真圓先生が、最近 新しく住職に就任されたばかり。
ちょうど28日はお不動さまの縁日とあり、先程までお勤めされていた護摩の油煙たなびく大坊で、先生に親しくご挨拶を頂戴しました。
全国各地どちらにお参りしても、さまざまな場所に、同門の縁の仲間(僧侶)が活動している。懐かしい再会を果たし、また交友を深めることが出来る。大変ありがたいご縁を十分に体感できた2日間となりました。
さて、東海三県のお不動さま霊場巡りも、今回を持って満願となりました。
今回お参りされた皆さまは、東海三県に拡がる36ヶ寺の大聖不動明王さまとありがたいご縁を結ばれた訳です。真言行者の守り本尊たる不動明王のご加護を頂き、日々生活を送る上で心強い安心を得られたことでしょう。
巡拝常連の皆さまは、満願の喜びと共に「次はどこに連れて行ってくださるの? 今から楽しみ!」と嬉しいお声を頂戴しています。
よい仲間が集まり、毎年 継続してお参り出来ている常福寺巡拝団。来年も、新しい霊場・寺院のお参りを計画する予定でいます。
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副住職
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自己紹介:
真言宗豊山派のお坊さん
大和国は豊山長谷寺の門前町に生を受け、仏縁あって僧侶に。
伊賀国は江寄山常福寺の副住職になりました。
現在檀務と共に、ご詠歌、声明ライブ、豊山仏青、歩き遍路など、色々活動しております。
真言宗豊山派のお坊さん
大和国は豊山長谷寺の門前町に生を受け、仏縁あって僧侶に。
伊賀国は江寄山常福寺の副住職になりました。
現在檀務と共に、ご詠歌、声明ライブ、豊山仏青、歩き遍路など、色々活動しております。
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